強さを測る指標として、「タッチ」はよく使われるフレーズです。「あの選手はタッチがいい」とか「タッチが柔らかい」などなど。とはいえ、実際のところ、タッチとは何なのでしょう。目に見えるものではないので、タッチと言われても今ひとつピンとこない方は多いのではないでしょうか。
そこで、この企画では、トップ選手たちがさまざまなケースにおけるボールタッチについて、自分の言葉で表現してくれます。彼らが語る直感的な言葉の数々から、これまであまり踏み込まれてこなかった「タッチ」の実像に触れてください。
今回のシリーズは、技術力の高さで知られる上田仁選手(岡山リベッツ)が、さまざまなストップのタッチについて話してくれています。
4回目は、ダブルストップのタッチについて表現してくれました。
※この記事は2019年に取材した内容をまとめたものです
ダブルストップを成功させる
打球面の法則とは?
ダブルストップとは、相手がストップしてきたボールをこちらもストップで返す技術で、主にサービスを出した後の3球目で使います。前回紹介した切るストップと同じか、それ以上に繊細で難しいタッチが求められる技術ですが、マスターできれば大きな武器になります。
紹介する知識やタッチを参考にして、ぜひ実戦で使えるようなダブルストップを身に付けてください。
ダブルストップは、自分が出したサービスに対して相手がストップしてきたボールの球質を見極め、それに応じてラケットの打球面や力加減を調整しなくてはならないので、とても難しい技術なのですが、実は成功させるための法則があります。
それは、「自分が出したサービスのインパクト(打球の瞬間)の打球面とは逆の打球面でダブルストップする」ことです。
右横下回転(ボールを真上から見て時計回りに回っている右横回転に下回転が加わった回転)サービスを出した後、相手のストップをダブルストップするケースを例に挙げて、この法則について具体的に説明しましょう。
右横下回転サービスを出すときは、打球面を開いてインパクトすることが基本です。その右横下回転サービスを相手がストップする場合、回転の影響を抑えられるようにレシーバーから見てボールの右下(サーバーから見るとボールの左下)を打つことが基本です。こうして相手がストップしたボールには、左横下回転(ボールを真上から見て反時計回りに回っている左横回転に下回転が加わった回転)がかかります。
したがって、このケースでダブルストップする時は、打球面をバック側(内側)に向けてインパクトすることが基本になるのです(写真A-1~6)。こうすると、相手のストップにかかっている左横下回転の影響を抑えられるため、ダブルストップの成功率が増します。
同様に、左横下回転サービス(打球面を内側に向けてインパクト)を出した後、ダブルストップする場合は、相手のストップに右横下回転がかかっているので、打球面を開いてインパクトすることが基本になります(写真B-1~6)。
説明したように、ダブルストップをマスターするためには、「自分が出したサービスの打球面とは逆の打球面でインパクトする」という法則が前提になると心得てください。
右横下回転サービスを出した後のダブルストップ
左横下回転サービスを出した後のダブルストップ
安定性重視のストップに対しては、上から抑えるイメージ
切るストップに対しては、後ろへ引くイメージ
ダブルストップを成功させるためには、上で説明した知識を覚えることが前提ですが、もちろんタッチも重要です。
そして、タッチは、相手のストップによって変える必要があります。
相手が打球面を合わせて普通に(安定性を重視して)ストップしてきた場合は、先述の法則にしたがって打球面をつくったら、上から抑えるイメージでダブルストップします。そうすると、打球が浮きにくくなり、ダブルストップを低く短くコントロールすることができます。
一方、相手がガツッと切るようにストップしてきた場合は回転が強くかかっていることが多いので、上から抑えるようにダブルストップしようとするとネットミスしてしまいます。その場合には、打球面を合わせたら、ラケットを少し後ろへ引くようなイメージで打球しましょう。
このように、法則を踏まえた上で、相手の動作からストップの球質を見極め、それに応じてタッチを調整することが、ダブルストップを成功させる秘訣です。
まとめ=卓球レポート編集部