強さを測る指標として、「タッチ」はよく使われるフレーズです。「あの選手はタッチがいい」とか「タッチが柔らかい」などなど。とはいえ、実際のところ、タッチとは何なのでしょう。目に見えるものではないので、タッチと言われても今ひとつピンとこない方は多いのではないでしょうか。
そこで、この企画では、トップ選手たちがさまざまなケースにおけるボールタッチについて、自分の言葉で表現してくれます。彼らが語る直感的な言葉の数々から、これまであまり踏み込まれてこなかった「タッチ」の実像に触れてください。
今回のシリーズは、芸術的なボールタッチで卓球ファンを魅了する松平健太選手(ファースト)が、彼の代名詞ともいえるブロックのタッチについて紹介してくれています。
今回取り上げるドライブに対するサイドスピンブロックは、松平選手のタッチの素晴らしさを象徴する技術です。マスターするのが難しい技術ですが、松平選手が話してくれる表現の数々からインスピレーションをつかんでください。
※本文の技術解説は右利きプレーヤーを想定しています
サイドスピンブロックは、ドライブを選ぶことが大切
サイドスピンブロックは、ドライブに対して左横下回転(ボールを真上から見て反時計回りに回っている左横回転に下回転が加わった回転)や左横回転をかけてブロックする技術です。
この技術は、相手のドライブが体よりも右側(フォア側)に来たときに使います。とっさの場面で使うことが多い技術ですが、効いていると思ったら、バック側に来たドライブに対しても、ボールが体の右側になるよう自分から動いてサイドスピンブロックします。
とはいえ、体の右側であればどんなドライブに対してもサイドスピンブロックできるかというとそうではありません。僕は、ボールに少し右横回転(ボールを真上から見て時計回りに回っている回転)がかかっているドライブに対してサイドスピンブロックを使うようにしています。そうすると、回転を利用しながらスイングできるので、打球の切れ味や安定性が高まるからです。
具体的には、「右利きの選手のバックハンドドライブ」や「左利きの選手のフォアハンドドライブ」は右横回転がかかっていることが多いので、それらのドライブに対してサイドスピンブロックを使います。
一方、右利きの選手のフォアハンドドライブがそうなのですが、ボールに少し左横回転(ボールを真上から見て反時計回りに回っている回転)がかかっているドライブに対しては、回転を利用するよう打球することが難しいので、サイドスピンブロックはあまり使いません。
この技術は、特に練習したわけではありません。2009年世界卓球選手権横浜大会男子シングルスで馬琳(中国)と試合していたときに、とっさに初めて使いました。あの試合でのサイドスピンブロックはそれほど質が高くありませんでしたが、今は、相手が簡単に打ち返せないように回転を強くかけたり、回転に変化をつけたりすることを心掛けています。
タッチのイメージは「ぎゅりん」
サイドスピンブロックには左横下回転をかける方法と左横回転をかける方法の二通りがありますが、初めに、僕がメインに使う左横下回転をかけるサイドスピンブロックのコツを紹介します。
左横下回転サイドスピンブロックは、まず、わきを空けてひじを体から離し、ラケットの先を斜め上へ向けるように手首をひねってバックスイングします。そうして準備したら、ひねった手首を返しながらラケットを下へ振り下ろし、ボールの正面よりほんの少し左を狙って、「ぎゅりん」という感じで強くこするように打ちます。
コツは、「手首を鋭く返しながらラケットを思い切り下へ振り下ろす」ことです。そうして鋭いスイングでボールをぎゅりんとこすると、打球に強く左横下回転をかけることができます。加えて、ボールを強くこすることによってドライブの球威を抑えられるので、コントロールもよくなるでしょう。
一方、サイドスピンブロックで左横回転をかけるときは、左横下回転と同じようなバックスイングから、ひねった手首を返しながらスイングしますが、このときのラケットは下ではなく、斜め下へ動かしながらボールの正面よりほんの少し左をこするように打ちます。
左横下回転をかけるときよりも打球面をややかぶせることがコツです。
紹介した二つのサイドスピンブロックで僕がメインに使うのは左横下回転です。左横下回転サイドスピンブロックはうまく決まれば相手が返せないほど強い回転をかけることができますが、その半面、成功させることが難しい技術でもあります。そのため、サイドスピンブロックを使うときは左横下回転を前提にしながら、左横下回転をかけることが難しいと判断した場合は、左横回転に切り替えるようにしています。
左横回転サイドスピンブロックはやむを得ず使う場合が多いのですが、対戦相手からすると僕のサイドスピンブロックは下回転が強くかかっているイメージが強いようで、最近では相手が深読みしてオーバーミスしてくれることが多いです(笑)。
ドライブに対するサイドスピンブロック(左横下回転)
ドライブに対するサイドスピンブロック(左横回転)
まとめ=卓球レポート編集部