この企画では独自の視点と卓球理論で名高い、世界卓球2003パリの男子シングルス優勝者ヴェルナー・シュラガー(オーストリア)に、世界卓球2023ダーバンの決勝、樊振東 対 王楚欽(ともに中国)を通して、現代卓球や選手の特徴、さらには、卓球競技の展望について語ってもらった。
第7回は、強くあり続けるための秘けつについてシュラガーの持論を聞いた。
中国に勝つために必要なこととは?
ここ20年で、私の後に世界卓球の優勝者が中国以外から出ていないのは事実です。「なぜ、中国だけが勝ち続けているのか?」「なぜあなたは勝つことができたのか?」というのは私がしばしば投げかけられる質問です。
なぜなのでしょうか?
一つ目の質問に対する答えは簡単です。中国には各地方に優秀なチームがあり、豊富な知識と経験を持つ指導者がいて、優れた選手がたくさんおり、質の高い練習を行う練習パートナーにも恵まれています。だから、中国は強いのです。
二つ目の質問にも明確な答えがあります。
私のコーチだったフェレンツ・カルサイ氏は、2000年頃から他のヨーロッパのナショナルチームに協力を呼びかけて、優れた選手同士が良質な練習をする環境を作りました。彼は、私たち(ヨーロッパ各国の選手たち)が互いに敵対することには意味がないと考えていました。国境を越えて質の高い練習を行うことができれば、皆に大きなメリットがあります。
もうひとつ、中国選手のようなプレーで中国選手に勝つことはとても難しい。勝つために必要なのは彼らとは違うプレーをすることです。
今、私がヨーロッパで注目しているのはフランスのルブラン兄弟、モーレゴード(スウェーデン)、ファルク(スウェーデン)らです。彼らは他の選手とは異なるプレーをすることで、大きなアドバンテージを獲得しています。彼らのプレーはとてもユニークですが、慣れられてしまえば、そのアドバンテージは失われてしまいます。つまり、長期間にわたって彼らのように他の選手と異なる存在でいることは非常に難しいのです。
変わり続けるために何をすればよいか?
私が世界チャンピオンになれたことと同じか、それよりも誇りに思っているのが、当時のプロツアーファイナルで10年間にわたって、シングルスとダブルスで出場し続けたことです。
なぜこのようなことができたのか。その理由は、私が変わり続けることができたからだと思います。
当時の私は、毎シーズン変化と改善を続けていました。私にとって最良のタイミングだったのは、毎年5月から7月の大きな試合のない期間でした。不要な技術や戦術を捨て、新たな技術や戦術を獲得するのです。それは、翌年に向けて成長するために、木の枝を剪定(せんてい)するようなイメージです。
そして、木の幹となる自分の基本的なプレーの部分を強化します。この強さから新しい技術や戦術が生じるのです。
こうして私は10年間にわたって変化し続けることで、トップにいつづけることができたのです。
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(まとめ=卓球レポート)