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宇田幸矢&戸上隼輔インタビュー(後編)

 アスリートには、それぞれの競技人生の中で大きな選択を迫られるターニングポイントがたびたび訪れる。そのときの判断がその後の競技人生を大きく変えることも少なくないだろう。進学か、就職か。国内か、海外か。アマチュアか、プロフェッショナルか。引退か、続行か......。
 このインタビューシリーズでは、今、転機を迎えている選手たちに焦点を当て、なぜその道を選んだのか、その決意に至った理由に迫る。
 今回は、今シーズン、ともにドイツ・ブンデスリーガでのプレーを決めた宇田幸矢、戸上隼輔(ともに明治大学)にダブルインタビューという形で話を聞いた。
 後編では、ダブルスで世界ランキング1位の座に就いている2人の強み、そして、同級生でライバルでもある2人の関係、また、今後の目標について聞いた。

ー今年は国際大会(WTTフィーダー フリーモントWTTフィーダー ウェストチェスター)で優勝し、国際的にも存在感をアピールしていますが、2人のダブルスの強みはどこにあると思いますか?

宇田 僕たちの強さの1つは、お互いが攻撃的なプレーができるというのがありますね。結果が安定しなかった頃は、ただ、2人が「自分が、自分が」という感じで崩れてしまうことがありましたが、アジア選手権前にいろいろ振り返って、お互いがつなげて、どうやってパートナーが決めやすい形をつくるかということを話し合ったりしてからは、プレーが安定しましたし、その時の調子によって、どちらかがアシストしてもう1人が決めるというパターンが定着してきました。それが最近の強さの軸になっていると思います。
 目標としては、オリンピックにダブルスもあるので、そこに出られるように頑張っていくことと、アジア選手権全日本では優勝できましたが、世界卓球で準決勝で負けているので、やっぱり世界卓球で優勝したいですね。グランドスマッシュも優勝できるように頑張っていきたいですね。

ーWTTスマッシュ シンガポールの決勝(樊振東/王楚欽戦)も流れはありましたね。

宇田 試合前に考えすぎたというか、相手が中国選手なので、思い通りにやらせないようにということを意識しすぎて、自分たちのプレーができていませんでしたね。厳しいボールを送らないと、先に威力のあるボールを打たれてしまうんじゃないかと恐れすぎていて、本当だったら打たせてからの展開などもあったはずですが、焦って攻めすぎたり、質の高さを求めすぎてミスをしてしまったり......。
 自分たちのいいプレーもありましたが、こっちから崩れてしまう場面もあったので、もっと自信を持って戦うことができれば、もう少し競れたのかなという思いはあります。個の力では相手の方が上だったかもしれませんが、コンビネーションでは僕らの方が勝っていたと思うので、そういう部分をもっと生かして、勝ちを狙っていきたいですね。

国際大会でも存在感を示す宇田/戸上ペア。WTTシンガポール スマッシュ2022では惜しくも2位となった(写真提供=WTT)


戸上 僕たちの強みは、攻撃をし始めたら連係よくフットワークを生かして、得点力の高いボールを打てるところだと思います。そういう攻撃的なプレーが、レシーブからもできるし、3球目、4球目からでもできる。
 自分たちの長所がお互いハッキリしているので、それを得点源にできるようなプレーができるところと、試合をしていくうちにどんどん分かってきて、同世代のペアに対しても競っても勝ち切れる強さが出てきたので、自分たちを信じてプレーできているのが強みですね。

ー普段もダブルスの戦術などについて話したりしますか?

宇田 試合の後に反省はしますが、普段は話さないですね。
 ただ、試合になったら、パートナーがどういうボールが好きかとか、こういうボールはこうやって返すだろうというのはお互いに把握していますし、プレーしているうちにその時の調子などはお互いに分かるので、それをベースに話したりはしますね。

ー海外リーグに行くことについて2人で話したことはありますか?

戸上 シンガポール スマッシュの遠征中に一度、2人で話しましたね。その時はもう宇田はほぼ決まりかけてたのかな?

宇田 まだ決まってはいませんでしたが、話はかなり進んでいましたね。

戸上 僕も決まってはいませんでしたが、めどは立っていたので、後は自分次第というところでした。宇田から、刺激を受けた部分はありますね。

宇田 目指しているところは一緒なので、一緒に話したり、考えも似ているところがあります。一緒に頑張りたいというのはありますね。

戸上 「宇田は海外に行くだろうな」というのは以前から感じていましたね。

宇田 相談ではないですけど、海外でやるかもという話をした時には、戸上はすごい背中を押してくれました。海外の方がスタイル的にも合ってるし、一番成長できるってすぐに言ってくれましたね。

海外リーグへの挑戦は戸上も背中を押してくれたと宇田

--刺激し合える関係はいいですね。一方で、2人はパリオリンピックについては、日本代表の少ない席を取り合うライバルでもあります。今後の目標と、2人のライバル関係について聞かせてください。

宇田 お互いダブルス(団体戦)に関してはパリを見据えてやっているというのは、既にいろいろなところで言ってきています。それが結果につながればいいですけど、今の日本のレベルや選考方法ではどうなるかわかりませんが、自分たちにはダブルスがあるというアピールはしていかないといけないと思っています。
 シングルスに関しては個人の問題なので、自分自身頑張って、ドイツに挑戦したり、大会で結果を残して、自分自身で勝ち取らないといけないですね。やりきるしかないと思っています。

戸上 ダブルスはこれだけ成績を残してきて、世界でも認知されるまでになってきたと思いますが、やっぱりシングルスでオリンピックを目指すとなるとまだまだレベル的に厳しいのが現状です。だからこそ、海外に行って自分を成長させるために、この1年間を大切に過ごしたいですね。
 また、海外も大事ですが、国内で勝たないといけない、サバイバルみたいなところがあります。宇田というライバルが常に目の前にいて負けられないという気持ちはありつつ、ダブルスも一緒に出たいですね。団体戦で中国に勝とうと思ったら、僕たちのダブルスの1点が絶対に必要だし、勝てるペアだとも思っているので、それまでに個人個人でたくさん経験を積んで結果を残してアピールすることが大切ですね。厳しい道のりにはなると思いますが、一緒に頑張りたいと考えています。

--長年の友人でもありライバルでもあるお互いに向けて言っておきたいことがあったらお願いします。

宇田 いつも一緒にいますから、特にないですけど(笑)
 戸上とは同級生で小さい頃からずっとライバルとしてやってきて、同世代を引っ張るような存在ですよね。バンビの決勝を戦った相手とのライバル関係がずっと続いてて、オリンピックを目指すところまで一緒に来られたことは、すごい刺激ですし、戸上が結果を残したら、自分も頑張らないとという気持ちになるので、そこはお互い高め合えてるのかなと思います。
 頑張ることができてる1つの理由というか、そういう存在ですね。
 ただ、戸上と話してるとびっくりすることはありますね。間違い方が半端ないので(笑)予想外すぎて笑えますね。面白いですね。

宇田の自分への評価に納得がいかない様子の戸上。反撃のチャンスをうかがう

戸上 って言ってる宇田さんも結構あるんですよ。だから、お互いさまじゃないですか?

宇田 僕も間違えることはなくはないですよ。でも戸上の方が格は上です(一同笑)

戸上 宇田とは小さい頃からずっと全国大会で戦ったり、中学に入ってからは一緒に世界で戦ったりしてきて、ずっと身近でやってきて、無意識にライバルと思える関係性です。それがあったから今も一緒に頑張ろうって思えますし、オリンピックに出たいというのも強く思えるので、宇田がいなかったら、今どうなってたかなと思うこともあります。
 小学2年生で試合をした相手が今同じ場所で戦えるというのも想像つきませんでした。宇田がいたおかげで今の自分があるのは間違いないですし、これから別の道を歩くことになっても、日本代表を引っ張っていくのは僕たちなので、頑張っていきたいですね。

バンビ(小学2年生)の時の宇田。センスフルなプレーの萌芽をこの時既に見せていた

同じくバンビ(小学2年生)の戸上。フルスイングのフォアハンドは今なお健在だ

バンビの部で優勝を争った2人はともに全日本王者になり、日本をけん引する選手となった

 宇田幸矢と戸上隼輔。この2人の取材は卓球レポートでは3度目だろうか。今回は両者とも全日本のタイトルホルダーとして初のインタビューとなったが、これまでと何一つ変わるところなく、いつも通り笑いが絶えない明るい現場となった。
 しのぎを削るライバル同士とは到底思えないこの和やかな雰囲気はどこから生じているのか。2人の生来の人となりもあるのだろうが、今回のインタビューを通して感じたのは、卓球選手としてのお互いへの敬意が根底にあるということだ。卓球への向き合い方、練習から普段の生活まで、お互いの努力を間近で見ているのも大きな一因になっているのだろう。そうして培われた信頼感が、2人のダブルスの強さの源になっていることは間違いない。
 最高の好敵手が身近にいることを、この先どう生かしていけるのか。パリ五輪を目指す2人の若者からますます目が離せない。

(まとめ=卓球レポート)

宇田幸矢&戸上隼輔インタビュー 前編「樊振東戦では自分の成長を感じた」(宇田)

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