世界卓球2022成都は、多くの人にとってそうであるように、張本智和本人にとっても忘れることができない大会となった。
このインタビューでは、男子日本代表メンバーとしては最年少ながらも、予選リーグから準決勝まで6試合全試合にエースとして起用され、また、世界卓球2018ハルムスタッドでメダル獲得を逃した唯一の当事者として今大会に臨んだ張本に、メダルを取り戻すまでの道のり、そして、中国から2得点を奪うという快挙について振り返ってもらった。
インタビュー後編では、張本が2得点を挙げ、王者中国に冷や汗をかかせた準決勝の試合の様子、王楚欽戦、樊振東戦の勝因に迫るとともに、続くWTT2大会についても詳しい話を聞いた。(前編はこちら)
自分が2点取らないと
中国に勝つ可能性は1パーセントもない
--いよいよ準決勝で中国のところまで来ました。どのような心構えで臨みましたか?
張本 中国戦は、今まで以上に自分が2点取らないと勝つ可能性は1パーセントもないと思っていました。でも、自分が2点取る可能性もたぶん1パーセントくらいかなと試合前は思っていました(笑)
僕としては王楚欽が一番やりづらいので、馬龍に来てほしかったんですが、やっぱり中国は僕に相性のいい王楚欽を2点使いしてきましたね。でも、若い王楚欽にはあの大舞台で、団体戦で、馬龍を3番に押しのけてまで2本出たというプレッシャーは相当あったと思います。王楚欽は、ここ最近のWTT2大会優勝が信じられないくらいのミスをしていたので、世界卓球のような大舞台で中国選手が感じるプレッシャーはすごく大きいんだなと改めて感じました。
王楚欽と対戦する準備はしていましたが、今まで0対4、0対4(2019年オーストラリアオープン、2019年スウェーデンオープン)でボコボコにされていて、左利きというのもやりにくいポイントですし、パワーも樊振東以上にあるので、試合前には勝てるイメージはあまりありませんでした。
それでも、自分が与えたプレッシャーもあったかもしれませんが、ミスが多かったですし、僕のレシーブもチキータだけにならずに、難しいボールをストップできたところもよかったと思います。あとは、ラリーでそれほど簡単に打ち負けなくなったので、相手もプレッシャーに感じて、どんどん強く打ってミスをしていたというところはあったと思います。
--今大会、特に中国戦での大きいラリーでの張本選手の強さは本当に印象的でした。
張本 今年の4月以降、田㔟さんや董さん(董崎民コーチ)に多球練習で、フォアハンドで動いたり、フォアハンドとバックハンドの連係を強化したり、今までやったことのない練習をたくさんやってきたので、この結果に結びついたんだと思います。それでも、中国を相手にここまでできるとは思っていなかったので、今の練習がいい方向に進んでいるんだな、と実感しました。
--ラリーでは特に両ハンドのバランスのよさが印象的でしたが、そこは意図的に強化してきた部分でしたか?
張本 そうですね。今まではフォアハンドは振りかぶって威力のある一発を打ちたい気持ちが強かったんですが、中国選手と対戦すると、威力のあるボールが来た時には、振りかぶっていると間に合わないので、バックハンドのつなぎ役くらいの気持ちでフォアハンドを振る時もありましたし、フォアハンドでつなげて最後にバックハンドも戻させて決めるという気持ちもありました。
その中で、チャンスがあればもちろんフォアでも仕留めますし、バックもフォアも関係なく、どちらに来てもラリーで返すんだという気持ちだったので、バランスがよくなったんだと思います。
--やはり、それは対中国を念頭に置いた練習してきた成果なのでしょうか。
張本 そこは、誰に対してということではなく、田㔟さんや董さんとは自分の卓球をもう一回作り上げるように言われたので、そこで、自分の卓球とは何かを考えた時に、ラリーでの粘り強さやバックハンドで決めることだと考えました。バックハンドで決めるのは練習しなくてもできることなので、まずは、多球練習で動くこと、フォア側に飛ばされた時に体勢を崩さずに打つようにとか、そういう練習をしてきました。
ただただ、自分のレベルを昔に引き戻したい、昔以上に引き上げたいという思いでした。
しなやかさと柔らかさがあったかつてのプレーを取り戻したい
--張本選手の中では昔の方が強かったという認識があったんですか?
張本 もちろん、1年前と2年前では1年前の方が強いとは思いますが、強い選手に勝てても、どこかで自分の本来のプレーじゃないなというしっくりこない感覚はあったのですが、その原因がよく分かりませんでした。今は、メンタル面が整っていることでいい練習ができているので、まずはメンタルが大事だなと感じています。
--ちなみに強かった時代というのはいつ頃のことですか?
張本 自分で動画を見ていて気持ちいいのは、中1、中2の世界ジュニア(世界ジュニア2016ケープタウン)や水谷さん(水谷隼/木下グループ)に勝った時(世界卓球2017デュッセルドルフ)とかですね。強さでは今の方が上だと思いますが、しなやかさや柔らかさを感じるのは当時のプレーですね。
あの柔らかさを保ちつつ、ラリー力を高めたいというのが今の目標です。固くあるべきところは固くあって、ボールタッチや体の動きは柔らかさを取り入れていきたいと思っています。
--自分の理想としている卓球から遠ざかっていた部分があったのですね?
張本 もちろん、パワーも付けていきたいという考えもあった中で、その付け方で、昔の柔らかさを失ってしまう時期も多少はあったと思います。今は、一番の武器であるバックハンドを尊重しながら、バックハンドを生かすために他の技術も引き上げるというつもりで練習しています。
樊振東戦で世界卓球を終わりにしたくなかった
--それでは、話題を世界卓球に戻して、4番の樊振東戦は振り返っていかがですか?
張本 1対2で回ってきて、自分が負けたらこの世界卓球も終わりなので、ここで終わりにしたくないなという気持ちがありました。でも、相手はこの大会で一番強い選手ですから、「あとはやるだけ」という気持ちで、あまり細かいことは考えずに「いまある力を出し切る」ことだけを考えてプレーしました。
最近の樊振東は、そんなにガンガン攻めずに、打たせてカウンターをするというプレーが主体で、ラリーでミスはしませんが、それほど怖さはありませんでした。自分が攻めていけば勝つ可能性はあるなという1ゲーム目の入りでしたね。
--手堅いプレーをする樊振東を打ち崩すのは容易なことではなかったと思いますが、どのような部分で張本選手の方が上回っていたと感じますか?
張本 次に対戦したらどうなるか分かりませんが、あの試合に限っていえば、バック対バックのラリーで勝てていたのがポイントですね。中国には、最終的にラリーにして粘れば勝てるという戦術があると思いますが、あの試合では樊振東がラリーで僕から簡単に点を取れずに、その選択肢がなくなっていたので、サービスやレシーブで崩しに来たり、中国らしくない戦術でプレーしていました。格上の中国選手に向かっていく戦術として、普段使わないような変なサービスとか変なレシーブで崩しにかかるということはよくありますが、それと似たようなことを樊振東がやっていたことに驚きました。
--そこまで樊振東を追い詰めることができたポイントはどこにあったと思いますか?
張本 やはり、ラリーで上回ったのが一番の勝因だったと思います。取られるにしても簡単には取られなかったし、33本のラリーもありましたが、完璧なバックストレートを打たれないと僕も抜かれないくらいのプレーはしていたので、点を取るにしても「これだけやらないとラリーで点を取れないのか」という印象を相手に与えることはできたと思います。
試合で中国を相手に実力を出し切ることも難しいですし、今までやってきた練習が合っているかどうかも分からない中で、それらが全部噛み合ったことで勝てたんだと思います。何か特別な「これをやったから勝てた」ということではなく、「自分がやってきたことを試合で出せた」というシンプルなことが勝ちにつながったのかなと思っています。
--樊振東に勝った瞬間はどのような心境でしたか?
張本 最終ゲームは10-7から10-9に追い上げられて、「ヤバい!追いつかれる」と思いながらも勝てて、ほっとしただけで、喜びを噛みしめる暇はなかったし、あとは戸上さんにすべてを託そうという気持ちでした。うれしかったけど、チームで勝つことが団体戦の目的なので、あとは「戸上さんの勝ちを祈ろう」という気持ちだけでしたね。
5番の戸上さん対王楚欽は、もし、シングルスだったら去年の世界卓球(世界卓球2021ヒューストン)みたいな難しい試合になると思いましたが、団体戦の準決勝のラストで、王楚欽も1ゲーム目は完全に調子がおかしくなっていましたね。たぶん、誰が相手でも王楚欽はあんな感じになっていたと思います。それに戸上さんの攻撃力があれば、勝つ可能性は30〜40パーセントはあるんじゃないかと思って見ていました。
それで、戸上選手が1ゲーム目で9-4とリードしたところからサービスミスをして、それはまだよかったんですが、次にレシーブミスをしたところで、戸上さんが焦っているのも分かったし、それが相手にバレているのも分かりました。そこで王楚欽がちょっと冷静さを取り戻しましたね。
ただ、あそこまでリードできたのは戸上さんだからだったと思います。でも、1ゲーム目のあの取られ方で挽回するのは難しかったですね。戸上さんの精神的ダメージも大きかったですし、王楚欽の安心感も大きかったと思います。あのゲームで試合が決まってしまったのは間違いないと思いますが、そこまでの希望を見せてくれたのも戸上さんなので、後悔はないです。
今までのどの試合より「仕事をした」感覚があった
--改めて、中国から2点を挙げたことをどのように振り返りますか?
張本 最終的にはチームが負けて悔しいという思いで終わりはしましたが、今までのどの試合よりも「仕事をした」という感覚はありましたね。もし、チームが勝っていたらどう感じていたか分かりませんが、今もまだ達成感みたいなものはあります。
喜びの大きさだけで言えば、王楚欽に勝った時の方が喜びはありましたね。僕自身、今まで団体戦で中国から点を取った記憶もありませんし、他のチームも含めて中国から点を取るところを見た記憶もほとんどなかったので、「本当に中国から団体戦で点を取ることができるんだ」というのはうれしかったですね。これで自分が4番でもう1試合できるという喜びもありました。
WTTなどの国際大会で調子がいい時に中国選手に勝つことはあるかもしれませんが、世界卓球で中国選手に勝てたことは自信にしてもいいかなと思います。
--今大会全体を振り返って見て、得られた物はありますか?
張本 O.イオネスク戦の負け以外はほぼ完璧だったと思いますが、あの負けがあったからこそ、その後いいプレーにつながったという部分があったと思います。自分の課題としては、1回負けなくてもその悔しさを覚えてプレーできるようにすることは絶対に必要だと思っています。オリンピックだったら、その1回が命取りになってしまうので、その1敗をする必要がないように自分の中で危機感をつくるようなメンタルを充実させたいと感じました。
その後のWTTチャンピオンズ・マカオとWTTカップ・ファイナルにもつながりますが、負けなくても負けの重みは分かっているはずなので、負けなくてもリベンジしたい気持ちを持つというのは本当に難しいと思いますが、その気持ちをつくり出すことが課題ですね。
技術面の課題はそれほどないと思っています。今のまま練習していけば必ずもっとよくなると思うので、やっぱり一番の課題はメンタルの整え方ですね。
--張本選手は全試合にエースとして出場しましたが、チームメートの戦いぶりはいかがでしたか?
張本 戸上さんが自分の思っていた以上のプレー、みんなが思っていた以上のプレーをして、結果を残してくれて、本当に戸上さんがいなかったらメダルはなかったと思うので、本当に感謝しています。世界ランキングも20位以内くらいに入るポテンシャルはあると思うので、国内ではライバルですが、この世界卓球においては本当に心強い味方で仲間でした。
及川さんは、香港戦の呉柏男戦が素晴らしかったですね。2対2の8-10から逆転勝ちしましたが、もしあの試合を落としていたら、5番で戸上さんと林兆恒に回っていたので、有利ではあっても、安定感のある林兆恒にそんなに簡単には勝てなかったと思うし、もし、落としていれば、日本は1位通過できなかったので、あの1点は本当に大きかったと思います。
横谷さんはハンガリー戦のみの出場でしたが、元気よく勇敢にプレーしていました。初出場の初戦でしかも世界卓球という大舞台であれだけ伸び伸びとプレーできたことは、勝敗以上に意味のあることで、今後の横谷さん自身の卓球人生においてよい影響を与えてくれると思います。ベンチでは常に全力で応援してくれて、チームの雰囲気を良くしてくれました。
でも、一番大変だったのは田㔟監督だったと思います。自分で選手を選べない中で、初めての世界卓球団体戦で僕たちを引っ張ってくれて、僕だけではなく他の選手が負けた後にも、ちゃんと次に繋がるように声をかけてくれていましたし、みんなが頑張ることができたのは、田㔟監督がうまくチームをまとめてくれたおかげだったと思っています。僕自身も田㔟監督との信頼関係が築けたことが成果に繋がった部分は大きかったと思います。
技術面ではなく、メンタルが一番の課題
--世界卓球後のWTT2連戦についても聞かせてください。WTTチャンピオンズ・マカオではファルク(スウェーデン)に1回戦負けでした。
張本 そうですね。やっぱり、勝ったあとはよくないし、負けたあとは逆にいい。本当にこの2大会もその通りになりました。それが分かっていながらも、やっぱり中国に勝った感覚のまま、試合に入ってしまったという面はあったと思います。
ファルクのバックハンドはクセがあってやりづらさがあったのですが、樊振東のようなきれいなバックハンドを意識しながら入ってしまって、表ラバーのフォアハンドをあまり攻めることができませんでした。3ゲーム目から監督に言われて、ストップを入れたり、フォア側を攻めたりしましたけど、ちょっと遅かったですね。遅くとも2ゲーム目にそれができていればというところはありました。
--今回のファルクもそうですが、オリンピックで敗れたヨルジッチ、世界卓球で敗れたO.イオネスクなど、ヨーロッパ選手に苦手意識はありますか?
張本 ヨーロッパ選手と言っても、それがドイツ選手だと意外に勝てて、フランチスカには負けたことがないですし、ボルもオフチャロフもそんなに嫌ではないです。たぶん、マカオは誰とやってもああいう結果になっていたかもしれないとは思います。こちらが中国選手に勝ったばかりで、相手も無条件に攻めてきますし、自分も「勝って兜の緒を締める」じゃないですけど、締め直すことができていなかったので、課題はそこですね。特にヨーロッパ選手に対する苦手意識はありません。
次のWTTカップ・ファイナルでは2位になって、今度は次の選考会(11/12〜13に行われた2022全農CUP TOP32船橋大会)が大事になってくると思うので、技術面ではなく、メンタル、考え方が一番の課題だと思います。
--WTTカップ・ファイナルは負けたあとの強い張本が出せた大会だったと思いますが、振り返っていかがですか?
張本 フランチスカは過去6勝0敗で、悪いイメージはありませんが、簡単に勝つことができる相手でもないので、相手の特長を理解しながらプレーすることを心がけました。フランチスカはバックハンドがうまくて、ちょっと台から下がってプレーするので、その分ボールが速くても距離があって対応できるので、そこを利用してラリーで有利に立つことができました。サービス・レシーブもうまくできたので、基本的に有利にプレーできました。
次のボルもオフチャロフも、自分のプレーができたのと、試合の重要なポイントを取ることができたので、ドイツのトップ3選手にストレートで勝つことはできましたが、そこにそれほど大きな意味は感じてないですね。自分のプレーができれば勝てる相手だということを感じることができたのはよかったです。
--決勝の相手は王楚欽でした。同じ中国選手に2度続けて勝つのは難しいと言われていますが、やはり、難しさは感じましたか?
張本 1ゲーム目は意外にあっさり11-8で取れて、2ゲーム目で7-8、8-9と2回チャンスがありましたが、そこで1度も追いつけませんでした。そこで1度でも追いつけていたら、また、ミスの出る王楚欽になっていたかもしれなかったですね。2本差を詰められなかったのは痛かったです。
次は3ゲーム目9-7でもチャンスがありました。特に何かを間違えたということはありませんでしたが、5ゲームスマッチの世界卓球団体戦と違って7ゲームスマッチで、相手にも余裕があったんだと思います。一つ一つの技術の地力の差もあったと思いますが、その3ゲーム目を取るべきでしたね。
今回は2対4で負けはしましたが、今までは王楚欽と対戦して、ほぼ競ることもなかったので、そのレベルの勝負ができたということには、悔しさとともに充実感というか、手応えも感じました。1点がこっちに入れば4対1、4対2で勝つ可能性もあった試合なので、まだ互角まではいきませんが、あと一歩いいプレーができれば勝てるところまで来ることができたというのは感じています。
2つの課題がクリアできれば
どの大会でも安定して上位に入れると思う
--世界卓球から3大会を通してみると、課題も見つかりつつ、自信になった部分も大きかったということですね。
そうですね。自分のプレーができれば、誰と対戦しても今はボコボコにされるようなことはないと思うので、まずは、どの試合でも自分のプレーをちゃんとすること。そのためには勝ったあとの試合でも、負けたあとと同じような気持ちでプレーに入ること。その2つですね。
その2つができれば、あとは試合の中でキーとなるポイントを取り切れるかどうか。そこはもう試合で力を発揮できるかどうかなので、試合前の準備としてはその2つができれば、どの大会でも安定して上位に入れるかなと思っています。
--それでは最後に今後の目標を聞かせてください。
まずは大きい目標としては、来年の世界卓球でメダルを取ることですね。シングルスのメダルは、たぶん来年が一番、自分の中でも実力も上がってきて取りやすい時期だと思うので、そこで絶対に取りたいです。
長期的には、選考会でポイントを取って、ちゃんとトップで選考会を通過して、2024年のパリオリンピックに出て、シングルスで金メダルを取りたいですね。団体戦と混合ダブルスはあとから着いてくると思うので、シングルスの金メダルはずっと目標として持っていたいと思います。
このインタビューは、張本が世界卓球とWTT2大会を含む1カ月を超える中国滞在から日本に帰国した2日後にオンラインで行われた。長期の海外遠征を終えてすぐに、Tリーグの試合を控えた練習後にもかかわらず、疲れた様子を見せることもなく、張本はいつものように早口で的確に質問に答えてくれた。成長した両ハンドさながらに、自信と謙虚さ、厳しさと優しさ、熱っぽさと冷静さがバランスよく同居するさまに、張本が技術だけでなく一流のアスリートのメンタルをも備えていることを改めて思い知らされた。
卓球レポートでのインタビューは約5カ月ぶりとなったが、画面越しにも伝わってきた張本の心身の充実は、私たちの想像を超えた張本の努力の賜(たまもの)であったに違いない。13歳で世界ジュニア王者に輝き、14歳で水谷隼を破って全日本チャンピオンの座に就き「怪物」と呼ばれた少年は、ときに落ち込み、ときに迷いながらも自分の道を歩んできた。その道がいかに険しい物であっても、アスリートにとってその「正しさ」を証明してくれるのは勝利だけだ。張本は、彼が歩んできた道が間違っていなかったことをこれ以上ない形で世界に見せつけた。自分の努力の正しさを証明したこの世界卓球は、張本にとってとてつもなく大きな意味を持つだろう。
中国はこれまでにもまして、張本対策に尽力してくるだろう。中国だけではない。世界のトップは皆、どうしたら張本に勝てるか、知恵を絞り、練習を重ね、全力で挑んでくる。もちろん、張本がそれを指をくわえて眺めているはずはない。怪物・張本智和の第二章がこれから始まる。
(文中敬称略)
(まとめ=卓球レポート)