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教えて!上D <ドイツ編>
第8回「世界卓球2024釜山 男子団体の見どころは?」

「卓球界の賢人」こと上田仁が、その確かな実力と見識をもとに、さまざまな質問に答える人気企画「教えて!上D(ウエディー)」が復活!昨年の8月から日本を離れ、ドイツに拠点を移した上Dが、卓球についてはもちろんのこと、ドイツやヨーロッパ各地への転戦の日々についても伝えてくれます。
 今回は、目前に迫った世界卓球2024釜山男子団体の見どころについて上田選手に語っていただきました。

Q.世界卓球2024釜山男子団体の見どころを教えてください

間もなく世界卓球2024釜山が開幕します。そこで、上田選手が注目するチームや選手、見どころを教えてください。(それ行けこまつ:卓球レポートスタッフ)

A.乗り出したら1番怖いチームは、フランス

 今回は、いよいよ開幕を迎える世界卓球2024釜山について書かせていただこうと思います。
 まず、日本ですが、前回の成都大会で中国から2点取りした張本(張本智和/智和企画)に加え、その張本と全日本決勝で壮絶な試合を見せてくれた戸上(戸上隼輔/明治大学)がツインエースとして日本を引っ張っていくでしょう。そこに、力を付けている篠塚(篠塚大登/愛知工業大学)と田中(田中佑汰/個人)、若さあふれる松島(松島輝空/木下グループ)の布陣は層が厚くなった印象です。
 パリオリンピックに向けて各チームとも気合が入っている中、一筋縄ではいかない試合が多くなると思いますが、前回の銅メダルを越える結果を期待したいですね。

 さて、本題はここから。中国や開催国の韓国、ドイツなどの王道チームはさておき、完全に僕の独断と偏見で男子の注目チームや選手について触れていこうと思います。
 まず注目なのが、グループ4のフランスです。夏に地元でオリンピックを迎えるフランスにとって、今大会はまさに前哨戦。メンバーには、アレクシス(A.ルブラン)、フェリックス(F.ルブラン)のルブラン兄弟にゴズィーと実力者がそろっています。
 中でもルブラン兄弟の弟のフェリックスは強いですね。僕がヨーロッパに来てからも「フェリックスが強い」とみんなが口をそろえて言っています。特に、彼のサービスの出し方は唯一無二で独創的です。従来のセオリーでは考えられない、親指をラケットから外すようなグリップ(ラケットの握り)でサービスを出すので、手首が利くせいか相当な威力のロングサービスを出してきます。対戦相手はこのロングサービスが気になってショートサービスへの対処が遅れ、フェリックスに先手を奪われてしまうシーンをよく目にします。
 兄のアレクシスも爆発力があるので、フランスは乗り出したら1番怖いチームなんじゃないかなと予想しています。

成長目覚ましいF.ルブラン(フランス)。大爆発なるか

 
 続いて、僕がひそかに勝ち上がりを期待しているのが、グループ8のイランです。
 昨年10月に行われたアジア競技大会では、日本に勝ってメダルを獲得するなど、実力は確かなチームです。No.アラミヤンNi.アラミアンの2枚看板にホダエイとくせ者ぞろいで、イランの強みはとにかく全員サービスがうまいこと。No.アラミヤンはコートの8割をバックハンドでカバーする独特なスタイルとセンスが素晴らしく、はまったらなかなか抜け出せない沼のような印象があります。Ni.アラミアンとホダエイもラリー戦に抜群の強さを発揮します。
 数年前まではイランが勝ち上がることは予想できませんでしたが、今はグループリーグを突破する力が十分あります。アジア競技大会のような「ジャイキリ(ジャイアントキリング=番狂わせ)」を起こすのか注目です。

「全員サービスがうまいイランも注目」と上田選手。写真はNo.アラミヤン

 
 個人の対戦として面白そうなのは、グループ3の韓国対インド。その中でも韓国勢対デサイです。
 最近のデサイはWTTを見てもとても安定していますし、台上フリック(払い)とその後の連係プレーがとにかくうまい。韓国勢の持ち味である足を止めて、振り回すことができれば、デサイが韓国から点を取ることは十分あるのではないかと思っています。

 そのほか、ドイツに移住してから試合を数々見ていて、今大会注目している選手はポーランドのレジムスキー。現在、ジンタク(神巧也/ファースト)と同じチーム(ダートム・ボゴリア)でプレーしていますが、両ハンドから隙間なく強打を打ち込んできます。
 まだ若い選手ですが、これまでボルオフチャロフ(ともにドイツ)に勝った経験があり、直近に行われたヨーロッパU21選手権大会を制して勢いに乗っています。今大会を機にフィーバーする可能性は十分あるでしょう。

 ルーマニアのE.イオネスクも若い選手ですが、かなり強い。僕は直近のブンデスリーガで対戦して負けましたが、サービスがモーレゴード(スウェーデン)に似て多彩かつ自由な感じで、そこから両ハンドをぶんぶん振り回してくるので、読みにくく、待ちにくい選手です。まだ粗削りで精神的なもろさも若干見受けられますが、それも若さゆえのこと。能力は高いので、今大会で活躍する可能性は大いにあると思います。

 最後に紹介するのは、クロアチアのゼリコです。彼はブンデスリーガで僕が所属するケーニヒスフォーヘンのチームメートでもあります。器用さはありませんが、ロングサービスがうまくて思い切りの良さが売りです。そして、何よりファイターです。
 気持ちを前面に出す選手なので、団体戦で気持ちが乗ってくると、どんどん入り出す爆発力があります。ゼリコはクロアチア内でパリオリンピックの3番手争いの最中にいるので、今大会で活躍して大いにアピールしてほしいですね。

台上からの展開が持ち味のデサイ(インド)
「粗削りだが、爆発力がある」と上田選手が推すE.イオネスク(ルーマニア)

 最後に、もう一つ見どころを紹介して今回を締めくくりたいと思います。
 世界卓球は歴史と権威ある大会ですから、シンプルに世界一の称号を懸けた戦いに注目したいところですが、冒頭で触れたように、夏にパリオリンピックを控えた今大会は「パリオリンピックの前哨戦」という見方がどうしても避けられません。日本はすでに代表(候補予定)選手が全て発表されましたが、3人目がまだ決まっていないチームは多いです。

 例えば、僕が現在住んでいるドイツは強豪ですが、ダン・チウが確定でオフチャロフがほぼ内定しており、3人目はフランチスカが有力だと言われていました。しかし、先日のWTTコンテンダー ドーハボルが優勝したことにより、情勢が変わってきているようです。WTT優勝で力を示したことと、長年にわたるドイツ卓球協会への貢献を踏まえると、3人目はフランチスカではなく、ボルが有力だという話も聞こえるようになってきました。そのため、今回の世界卓球の活躍いかんで、フランチスカとボルのどちらがパリオリンピックに出場するのか決まるかもしれません。
 ドイツだけでなく、ほかのチームも3番手争いが熾烈(しれつ)です。今大会はベスト8に入ればパリオリンピックの出場権を得られるということですが、チームの勝敗だけでなく、各チーム内のパリオリンピックの代表争いも見どころでしょう。「勝負どころで誰が出場するか」は注目です。


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(文=上田仁 まとめ=卓球レポート編集部)

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