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パリ五輪女子団体銀メダル 
張本美和インタビュー前編

 弱冠16歳にしてパリオリンピック卓球競技(2024年7月27日〜8月10日)女子団体に出場し、堂々たる戦いぶりを世界に見せた張本美和(木下グループ)。見事決勝進出を果たし、日本女子の銀メダル獲得に大きく貢献した張本に、銀メダル獲得までの道のりを振り返ってもらった。
 インタビュー前編では、女子団体を迎えるまでと、1回戦のポーランド戦準々決勝のタイ戦を振り返ってもらった。



すごくいい雰囲気の中で試合ができた

――今回、フランスに入ってから張本選手の出場する女子団体が始まるまでの期間は、どのような準備をしていたのかお聞かせください。

張本美和(以下、美和) 一番優先していたのは平野選手(平野美宇/木下グループ)と早田選手(早田ひな/日本生命)のシングルス前の練習相手でした。お願いされたら、まず、そちらが優先で練習相手をして、時間が空いている時は自分の練習をして調整していました。

――張本選手は主に誰と練習していたのですか?

美和 日本選手団で来ていただいたスパーリングパートナーの選手と練習をしていました。対戦相手を想定してお父さん(張本宇)とやったりもしましたし、スパーリングパートナーの木造さん(木造勇人/関西卓球アカデミー)と出澤さん(出澤杏佳/専修大学)とも練習していただきました。

――先に行われた混合ダブルスやシングルスの試合は見ていましたか?

美和 お兄ちゃん(張本智和)の試合はほとんど見ていました。ライブ配信をスマホで見ていました。

――混合ダブルスでは張本智和/早田ひなペアが北朝鮮ペア(リ・ジョンシク/キム・クムヨン)に1回戦敗退という意外な結果になりましたが、その試合はどのように見ていましたか?

美和 そうですね。ミックスは北朝鮮ペアの情報がないので難しい試合になるだろうなと思っていたので、意外というよりは、普通と言えば普通かなと思いました。初めて出てきたペアだと思うので、分からない部分もあったと思います。
 お兄ちゃんのシングルスは1回戦から、最後(準々決勝)は負けてしまいましたけど、最後まですごい強かったなと、見ていてたくさん感動しました。

――智和選手以外の試合も見る機会はありましたか?

美和 平野選手と早田選手の試合はライブで見ましたが、ほかの選手は気になるカードがあった時だけちょこっと見ただけで、あまり「この人の試合を見よう」というのはありませんでした。

――張本選手は国際大会の経験は既に豊富だと思いますが、オリンピックの会場や選手村などにはどのような印象を受けましたか?

美和 会場はたくさんのお客さんが見に来てくださっていて、いつものWTTの試合だと中国のファンの方が多いんですけど、オリンピックだったので海外のファンの方がたくさんいて、国旗を掲げていたりして楽しめまたし、すごくいい雰囲気の中で試合もできました。たくさん声援がありましたが、いざ自分も試合をして集中したらあまり気にならず、すごく貴重な経験をさせていただきました。
 選手村は会場から結構遠くて、40分〜1時間くらいかかって移動していました。部屋のベッドが段ボールで作られていましたが、違和感はなくいつも通りに寝ることができましたし、各国の棟のデザインが全部すごく違って、見ていても、歩くだけでもすごく楽しいなという印象でした。
 ご飯が足りないときは、自分で少し持ってきたものを食べていました。あと、扇風機は各部屋にあるんですけど、エアコンは日本チームが用意してくださったので快適に過ごせました。

本会場で練習する張本。自身の調整だけでなく、チームのサポートも大会前半の重要な任務だった(写真提供=ITTF/ONDA)


エース起用にはすごくプレッシャーを感じた

――それでは張本選手自身の試合の話をうかがっていきたいと思います。チームメートの早田選手のけががあって、団体戦は想定していたオーダーとは違う形になったのでしょうか?

美和 1回戦のポーランド戦は最初から平野選手と早田選手が組む予定で、その後は相手によって変えるという形で、早田選手がけがをしたからダブルスに回ったわけでもないですし、私と平野選手がずっとダブルスの練習をしてきたというのは事実ですけど、2回戦以降も本当に試合に勝つためにペアを変えたという感じで、早田選手のけがの影響ではないです。

――シングルス2点のエース起用のプレッシャーはありましたか?

美和 そのオーダーを言われた時はすごくプレッシャーを感じましたし、平野選手がシングルスで私と早田選手のダブルスでもいいんじゃないかと思ったり、私も少しは期待されているのかなと思ったりもしました。でも、「勝たなきゃいけない」という思いもたくさんあって、すごく緊張しましたし、不安がたくさんありました。

――初戦のポーランド戦では2番のA.ウェングジン戦で、初めてオリンピックの本番の舞台に立ってみていかがでしたか?

美和 試合が始まる前まで練習だったりとかとても緊張したんですけど、いざ始まったらいつも通りの試合ができましたし、「オリンピックだ」という感じは正直、いい意味でなくて、いつも通りにプレーすることができました。

初戦のポーランド戦では「いつも通りにプレーできた」と張本(写真提供=ITTF/ONDA)


――実力差もあったと思いますが、チームとしても3対0で勝って、いいスタートを切れましたね。

美和 そうですね。自分の1試合目も勝利して2戦目に行くことができて、いいスタートを切れたと思いますし、そこでオリンピックという感じがしなかったというのことにすごく自分の中でびっくりしていて、オリンピックの舞台に立ったら緊張して頭が真っ白になるんじゃないかなと想像していたんですけど、いつも通りにできて、すごくいいスタートが切れました。

――ちなみに、これまでで一番緊張した試合はいつの試合ですか?

美和 そうですね。私は本当に緊張しない試合がないので、ずばぬけてこれが緊張したというのはないですね。強いて言うなら、蘭州のWTT(WTTスターコンテンダー蘭州。2023年10月)の準々決勝で初めて孫穎莎選手(中国)と試合をした時は緊張とかプレッシャーじゃないですけど、「ちょっと怖いな」という感覚があって、それは今でも覚えています。0対3で負けて、やっぱり強いなと思いましたし、いつも通じているものが全然通じなかったので、どうしようという感じで試合していた記憶があります。

――孫穎莎選手は格上で、張本選手はプレッシャーなくプレーできる相手だとも考えられると思いますが、その怖さはどこから来たものだったと思いますか?

美和 今まで孫穎莎選手のプレーを参考にしてきた部分もあるので、孫穎莎選手の持っている「自分にないもの」が怖さになったり、やっぱり世界ランク1位というのが怖さにつながった原因かなと思います。

――話をオリンピックに戻して、女子団体の2回戦の対戦相手はフランスを破って勝ち上がってきたタイでした。開催国フランスを破ってきた勢いに不安はありませんでしたか?

美和 逆に私たちはみんなフランスが来た方が嫌だねと話していました。嫌というか、やっぱり開催国なので応援もあるだろうし、どちらかというとフランス上がってきたら、ちょっと雰囲気はフランス寄りになってしまうのかなという感じで見ていました。
 フランスは、ユアン・ジアナン選手はフォア表(フォア面に表ソフトラバーを貼る異質型)だったり、特徴のあるサービスだったりとか、私は対戦したことがありませんでしたが、どちらかというと特徴があるのはフランス選手だったと思います。タイの選手は右裏裏や左裏裏(ドライブ攻撃型の戦型)ですが、フランスに勝ってきているので、私は気が引き締まったかなというのがあります。

――2番のJ.サウェッタブート選手は実際に対戦してみていかがでしたか?

美和 やっぱりパワーがすごい選手だなというのを一番強く感じました。アジアの選手でバックハンドサービスを出す選手はあまりいない中で出していたので、そこはちょっと特徴のある選手だなと思いながらやりました。パワーはヨーロッパ選手並みにあったので、そこはすごく強い部分だなと感じました。

――実際に映像も見て準備していたと思いますが、パワーは想像以上でしたか?

美和 そうですね。映像で見た時はやっぱり球のスピードというのはあまり分かりませんでしたが、木原選手(木原美悠/木下グループ)が最近のWTTスターコンテンダー バンコク(2024年7月)で試合をして、すごいパワーがあると言っていたので、それをアドバイスしてもらって準備をしました。木原選手が言った通り、すごいパワーがあったなという印象で、映像だけではあまり分からなかったですね。

――J.サウェッタブート選手に対しては、どのようなプレーを心掛けましたか?

美和 やっぱりパワーを出させないというのが一番うれしいので、それができたら一番いいですけど、それができないときに処理するのも大事かなと思っていて、自分は攻めるプレーが得意ですが、ブロックや守りのプレーも自分の中では得意としているので、その準備をしっかりしました。J.サウェッタブート選手はスピードがあるボールを打つときは、事前に映像を見てコースが分かっていたので、取れないボールももちろんありましたが、しっかり準備して臨めたのでよかったと思います。

後編に続く

パワーのあるJ.サウェッタブート戦は第1ゲームのジュースを制して完封した(写真提供=ITTF)

(取材=卓球レポート、文=佐藤孝弘)

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